カリオペ古参のYさんのご主人が、長い闘病の末、亡くなられました。
私もご生前、何度かお目にかかったことがあります。柔和で人格高潔な教育者でいらっしゃいました。
美しい秋晴れの中、今日は教会での葬儀ミサでした。
敬虔なカトリック信者でいらしたご主人様は、最後の日々、神父様の訪問を心待ちにしておられたそうです。
告解(懺悔)の後はいつもすっきりしたお顔をなさっていたと。
聖歌と祈り、聖体拝領、メッセージ、献花。簡素で心のこもったご葬儀でした。
式後、列席者は順次会堂を出て、玄関でご出棺を見送りました。
出棺のクラクションが鳴り、その音がやんだその刹那。
私の目の前に、ふわりと一羽のアゲハチョウが現れました。
蝶はしばらく静かにあたりを舞い、飛び去りかけてはまた戻り、やがて去っていきました。
私は胸を衝かれ、その行方を静かに目で追いました。
蝶はギリシア語でプシュケー。この語は「魂」という意味も持ちます。
日本でも、死者の魂が蝶や蛍などに姿を変えて現れるという伝承がありますね。
蝶は幼虫から蛹、そして蝶へと変化するので、古今東西、復活や変容の象徴になりやすいのでしょう。
クラクションが鳴り終わった一瞬のしじまにふと現れたアゲハチョウは、この世での旅路を終えた魂が天に旅立ち、新しいいのちに生まれ変わる象徴のように思われました。
この静かな感動を何とか言葉に表そうとしたのですが、俳句の17音にはどうもおさまりきらず、初めて短歌を作ってみました。
揚羽蝶一羽ふはりと出棺のクラクション鳴り消えゆくしじま
帰宅してピアノに向かうと、譜面台にブラームスの楽譜が。
一昨日、調律をして頂き、響きの確認のために弾いた「間奏曲」のページが開いています。
少し遡って作品117-1を弾いてみました。
この曲には冒頭にこんな詩が引用されています。
Schlaf sanft, mein Kind, schlaf sanft und schön.
(眠れ、安らかに、吾子よ)
Mich dauert’s sehr, dich weinen zu seh’n.
(おまえが泣くのを見るのは忍びないのだ)
こんなにも静謐な慰めの音楽が他にあるでしょうか。
神様から「Yさんに送ってあげなさい」とメッセージが降ってきたような気がして、YouTubeのサイトを送りました。
はたして、とても感謝して下さいました。