私は生まれつきコテコテの相対音感です。物心ついた時から、聴こえてくるメロディは全部階名で歌えました、というか、階名で聴こえてきました。「チョッコレイト、チョッコレイト、チョコレイトはーーめーいじ!」のコマソンは「ラッミレ#-ミ、ラッミレ#-ミ、ファファファミレファーー ミーレ#ミ!」という具合。だから子供の頃、ピアノのレッスンで読譜に苦労しました。ト長調の曲の時、先生が各音符の上にカタカナで「レ、シ、ミ」と書いて下さっても、私には「ソ、ミ、ラ」にしか聴こえない。バイエルの下巻のどこかにドイツ音名の説明が書いてあって、「鍵盤の名前は音名、曲の中のメロディラインは階名」と区別できるようになりました。高校の音楽の時間に派生音の音名まで習って、ようやくスッキリしました。G-dur(ト長調)は主音Gがドなんだ、と。音名と階名は別の機能を持っています。音名は鍵盤の住所です。階名はその曲の主音(ド)と、今歌っている音のインターバル、すなわち音程を表すのです。
声楽を始めた時、「移動ド」とか「固定ド」とかいう概念を初めて聞いて、固定ドでなぜメロディが歌えるのかわからなかったのですが、「絶対音感」を持っている友人が複数いて、その人たちは固定ドの方が歌いやすいんだとか。でも当時の学校教育は移動ド(そんな言葉は知らなかったけれど)だったので(今もタテマエ上はそうです)、絶対音感を持っていても学校では移動ドで歌わされていました。絶対音感の人たちも、私も、知っている曲をドレミで歌うのに楽譜は要りませんでした。ただ、ヘ長調の「富士山」の歌を「ドードレド ラーファソラ」と歌うか、「ソーソラソ ミードレミ」と歌うかの違いだけで。音感があれば楽譜は要らないのです。
現実には、歌う時には音程が取れさえすればよいわけです。階名で歌う曲なんかないですからね(ドレミの歌は例外)。ただ、「ドレミ」という紙おむつのCMには閉口しましたが(笑)。
最近は固定ドが主流になってきたので、学校でも階名唱はしないみたいだし、生徒さんたちの混乱を慮って音感の問題にはちょっと蓋をしていたのですが、S先生が「ドレモロ唱法」という一種の移動ド唱法でレッスンをなさるのと、S先生のレッスンで、楽譜を離れてコマソンや唱歌をちょっと歌ってみるというようなシーンで、全く階名がわからない方が続出する現実を目の当たりにしてショックを受けました。そして、どうやら私の音感は「素数はどんな大きな数字でも見ただけでわかる」とか、「過去の年月日を聞くだけでその日が何曜日だかわかる」というような特殊能力に近いものかもしれない、と思うようになりました。ただ、音感の方は素数や曜日と違って、訓練すれば必ず誰でも身に付けられます。そして、後天的に身に付ける音感は相対音感に如くは無し。
ということで、チャットGPTの助けを借りて、ただ今音感の教材を作成中です。