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邦楽の世界

昨年のラフカディオ・ハーン顕彰コンサートでご一緒した尺八奏者のSさんからご招待を頂き、Sさんのリサイタルを聴きに行ってきました。
日本の伝統芸能に触れると血が騒ぐって感じ、ありますよね。昔はカーラジオからFMの「邦楽の時間」が流れてくるのが小さな楽しみでしたが、最近はあまりFMを聴かなくなったので、久し振りにじっくりと邦楽を味わわせて頂きました。尺八の音は、独特の間の取り方と相俟って「悠久」を感じさせてくれます。それが地唄や筝曲と絡むと、あっという間に現世の時間の流れに引き戻されるのも興味深く、あっという間に時間が過ぎてしまいました。

今は洋楽に触れる機会の方が圧倒的に多い世の中になってしまいましたが、日本の伝統芸能は日本人のアイデンティティを再認識させてくれます。子どものうちからこういうものにも触れる教育が大事だなあと思うと同時に、声楽発声を学ぶ場合に露わになる、日本人特有の「発声の癖」についても考えさせられました。
大恩ある師匠、W先生が常々仰っていたことですが、日本人がヨーロッパ発祥の声楽発声を身に付ける上でネックになり、しかもヨーロッパ人の先生にはその直し方がわからない「下顎の硬さ」、「舌根の硬さ」、「響きの浅さ」といった諸問題は、実は日本語という言語の特殊性から来ているのだ、ということ。日本人声楽家が例えばオペラを歌った時、「なんかヨーロッパ人とは違う」のは、「よい響き」の美意識がそもそも違っているからだ、ということ。それが改めて思い出されました。
美意識は文化相対的なものです。邦楽の美しさと洋楽の美しさは別の物。熊本城とノイシュヴァンシュタイン城は様式も素材も全然違います。熊本城の建て方でノイシュヴァンシュタイン城は建てられません。地唄とオペラアリアだって同じことですよね。日本人が声楽発声を身に付けようと思えば、まず「違い」を認識するところからですが、邦楽に接する機会が減ったせいで、私たちは日本人のDNAに刻まれた「日本的な美意識」に対して無意識になっている。このことを久し振りに想起したひとときでもありました。邦楽をもっと聴こう!そうしたら「違い」もわかってくるし、どちらも素晴らしいということもますますわかってきますよね。

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