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リト

来年度の授業で使う教科書を選定する時期になりました。
私は既習ドイツ語(大学2年生のクラス)で、この3年間『リト』というメルヒェンを読んできました。
コロナ禍のさなかに、大好きな山元加津子さんという作家さん(愛称かっこちゃん)が出されたハートウォームなお話です。タイトルの「リト」は子犬の名前。little princeすなわち「星の王子さま」から取られています。

みなしごのリトは、自分の名が「リト」であることを生まれながらに知っていました。そして物語の中盤で、自分を「リト」と呼んでくれるオリーという少女と出会い、一緒に暮らすようになります。やがて町に疫病が拡がり、リトは、パン屋であるオリーのママのパンを町の人々に届けるべく大奮闘します。その過程で、物語前半でリトが出会った動物たちや人々とのエピソードがすべて感動的な形で回収されます。最後の最後に、かつて流行り病で亡くなったオリーのパパの化身がリトの「導きの糸」であったことが明かされます。

この素敵なお話は、出版後まもなくドイツ語に翻訳されました。その翻訳チームのお一人、えりかさんのブログを私は昔から愛読していました。そして、かっこちゃんのブログで『リト』のドイツ語訳が出たことを知り、えりかさんに連絡を取って、このドイツ語訳『リト』を大学2年生の教科書に使いたい旨を伝え、ドイツ人の俳優さんに朗読して頂いた音声ファイルも送ってもらいました。

ドイツ語版『リト』は大学2年生用のテキストにぴったりのレベルで、かつ興味を持って読み進められる内容で、学生さんの評判も頗る良かったのですが、ドイツ語版を調達するのに毎回とても苦労し、昨年は一時帰国するえりかさんのスーツケースに入れて日本に運んでもらうという裏ワザを使いました。しかし今年はそれも難しそうで、『リト』を読む授業はこれにて終了することになりました。

『リト』はモナ森出版から、日本語だけでなくドイツ語、英語、中国語、韓国語の版も出ています。本文の後には、高名な生命科学者の村上和雄先生が「サムシング・グレイトに感謝して生きる」という長い跋文を寄せられていて、これもなかなか読みごたえがあります。世界情勢が混迷し、価値観も混乱し、環境問題も深刻化している今、迷える私たちの心に一筋の光明が射す一冊だと思います。皆様にもご一読をお勧めします。

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