Blog
ブログ

「わたし」は「あなた」

中田喜直の「霧と話した」をご存知でしょうか。歌うたいの間ではよく知られた曲です。作詞の鎌田忠良という方については寡聞にして知りませんが、この詩は大変に理解が困難で、読めば読むほど私の思考は五里霧中(笑)。しかも曲想が何とも陰々滅々で、正直言ってずっと避けてきた曲でした。
うちの生徒さんが、来月イベントで歌われるというのでこの曲をレッスンに持って来られたのですが、発声はともかく、曲にどうアプローチしていいのか皆目わからなかったので、手がかりを得るためにS先生の公開レッスンに持っていくことにしました。
結果、この曲に対する印象や歌う心構えがガラッと変わりました。この曲をステージに乗せてもいいなと思っている自分が不思議。

何がオドロキかと言って、まず冒頭の「私の頬は濡れやすい」という歌詞の「私」は「あなた」なんだという解釈。ドイツ人は独り言で自分に対して「おまえ(du)」と言うのですが、これは逆。幼児に「ボク、おてて洗おうね」なんて呼びかける時に使う二人称としての一人称なのだと仰るのです。衝撃でした。そして、「濡れやすいんだね」、つまり「キミは泣き虫なんだね」と、労りをこめて寄り添っているのだと。

「そこは今でも痛むまま」は、い・た・む・ま・ま…と呟きのようにフェードアウトするのだと。「霧と一緒に恋をした」という意味不明な歌詞も、S先生は「霧は霧だからいいんです」と仰る。相手は霧のような、ある意味正体不明な人なんでしょうね。相手の体温や熱量は感じられない。つまり、自分が求めているような愛を与えてくれる相手ではない。でも自分を大きく包んでくれているわけです。その包容力ゆえ、かえって自分の卑小さが自覚され、手の届かない相手への思慕を昇華できない苦しみ。その気持ちに寄り添う歌を歌いなさい、とS先生は仰るのです。

いや~、目からウロコとはこのことです。一気にこの曲が好きになりました。S先生曰く、この曲には不思議な浄化作用があると。私もその後なにか心の蓋が開いたような状態になり、すっかり忘れてしまっていた「エレストゥー」という曲が脳内再生されっぱなしです。この現象は何なのでしょうね?これが浄化?

ブログ一覧

Contact
お問い合わせ

お問い合わせは
お電話・メールフォームから。
さあ、ボイストレーニングを始めましょう!