シューマンの「私の美しい星」という歌曲をご存知でしょうか。「ミンネシュピールMinnespiel」という歌曲集の第4曲です(「ミンネシュピール」は「恋の戯れ」などと訳されています)。まあ何と美しい曲があったものか、と感動する、シューマンらしい絶品です。ただし、歌唱が良ければですが。テキストは東洋学者でもあった詩人のリュッケルトの詩で、シューマンはリュッケルトの詩にたくさん付曲しています。
Mein schöner Stern! Ich bitte dich,
O lasse du dein heitres Licht
Nicht trüben durch den Dampf in mir,
Vielmehr den Dampf in mir zu Licht,
Mein schöner Stern, verklären hilf!
Mein schöner Stern! Ich bitte dich,
Nicht senk’ herab zur Erde dich,
Weil du mich noch hier unten siehst,
Heb’ auf vielmehr zum Himmel mich,
Mein schöner Stern, wo du schon bist!
私の美しい星よ、お願いです、
どうか、あなたの晴れやかな光を
私の中の靄で曇らせないで。
それより、私の中の靄を光へと
浄化することに力を貸してください、私の美しい星よ!
私の美しい星よ、お願いです、
まだこの下界に私が見えるからといって
地上に降りてこないで。
それより、あなたのいる天上へと
私を引き上げてください、私の美しい星よ!
愛妻クララに対するシューマン自身の愛と讃美の気持ちがこのテキストの内容に重なったのでしょう、テノールが歌う歌として書かれていますが、ソプラノが歌っても素敵です。バーバラ・ボニーの録音が素晴らしい。星「Stern」は男性名詞なので、憧れの男性に対して女性が歌っているというシチュエーションも想定できます。シューマンの連作歌曲「女の愛と生涯」のテキストの男性観と重なります。いずれにしてもシューマンの愛の投影であることは間違いなさそうです。
今月の発表会の講師演奏で、ヴォルフの「もう春だ」に加えてこの曲も歌いたいと思っています。