吸う前に吐く!
呼吸は「呼気」と「吸気」に分けられますが、上手に吸うには「息を吐き切る」ことが大事。日常生活にはなかなか「意識的に息を吐き切る」機会がないので、まずがここから練習しましょう。
体が硬いと肋間筋や背筋が十分に伸縮せず、肺がよくふくらまないので、吸おうとしても十分吸えません。まずは体壁を柔軟にして筋肉の伸縮性を高めましょう。
いざ歌おうとすると、まず「息を吸う」ことから始めがちですが、吐き切れば呼気が「自動的に」流れ込んできます。ゆったりとした気持ちでこの吸気を体の深いところに取り込みましょう。タイミングを外して反射的に吸ってしまうと上半身が硬くなるのでご注意!まずは「自動的に流れ込んでくる」呼気をじゅうぶんに感じながら深く取り込むことに意識を集めて下さい。
ニュートラルに立つ!
声を出す前に、余分な緊張のないニュートラルな状態で立っているかどうかチェック!スポーツと同じで、すぐに動き出せるよう準備された状態を覚えましょう。
まず、全身の関節をゆらしてこわばりを取り去り、上半身をリラックス状態にします。次に両足を肩幅に開き、膝を一度ゆるめ、スッと伸ばして自然に立ちます。重心はまず、足の裏の「土踏まず」に置いて背筋を伸ばし、腰がきちんと据わっているか、肩と喉の力はラクに抜けているか確認しましょう。この姿勢だと深い呼吸が自然に自由にできます。座位では、坐骨の上に重心を置き、膝は少し開きます。上半身の上体は立位と同じです。
よくある質問~地声、裏声、ミックスボイス~
私たちが普段しゃべる時の声は地声ですが、地声の時は声帯全体を振動させています。また、声帯全体はゆるんで分厚い状態になっています。地声発声は声帯にかかる負担が大きいのですが、息が声帯のあたりにまとわりつかずに上へ抜けるよう、呼気圧を高めれば喉の負担は軽減されます。
これに対して、裏声の時は声帯の縁だけを振動させています。また、声帯は引き伸ばされて薄くなっています。
歌を歌う時、低音域は地声で歌えますが、音がだんだん高くなってくると、声帯を引っ張って引き伸ばすことで対応するのですが、伸ばせる限界まで来ると、そこからは声帯の使い方を変えて、声帯の内側の縁だけを振動させることで対応します。これが裏声です。
ミックスボイスは、裏声と地声の境目付近を上手に通過する、つまり声の「ひっくり返り」をなくすテクニックです。下から上へ音程が動く場合は、だんだん声帯が引っ張られていく中で少しだけ「ゆるめる」要素を付加する、上から下への場合は逆に、だんだん声帯がゆるんでいく中で少しだけ「引っ張る」要素を加味します。これは高等技術なので、言葉だけではとうてい伝えられませんが、根気よく合理的に練習すればだれでも習得できます。
お悩みナンバーワン~声の「ひっくり返り」~
地声と裏声の境目だけでなく、歌っている途中に声が裏返ってしまうことがありますが、その原因はおおむね2つ考えられます。1つは、声帯の閉じ方が不十分な場合です。声帯は前から後ろに向かって開閉するのですが、後ろの方が閉じきれていないと、そこで息が停滞して声がひっくり返ります。口を開けたまま、高めの裏声で軽くハミングしてみましょう。その響きを保ちながら「アー」と小さな声を出してみます。「アー」にする時に腹筋や背筋がゆるまないよう気を付けてください。
2つめは、呼気流が弱く、息が上へ抜けていない場合です。これをよく「息のポジションが低い」と表現しますが、この時、息が声帯にまとわりついて声帯を揺らすので、声が割れるのです。対策は、呼気圧を高め、息をなるべくスピーディーに上へ抜くこと。また、軟口蓋をしっかり挙げたまま、呼気圧を高くを保ちつつ下行音型の練習をすると効果的です。
アインザッツとアンザッツ ~どう違う?~
アンザッツは「きっかけ」、つまり「歌い出し」のことです。スムーズなアインザッツのためには体を使って声帯を引っ張ります。
アンザッツも「発端」という意味ですが、音楽用語としては「音声の出し方」という意味で、声楽の場合は特に「声のあたる場所」のことを指します。高音域は額や頭頂部、後頭部などに声を当て、中音域では上唇の裏側や硬口蓋、低音域は胸に当てます。
「当てる」というのは、アンザッツの場所を緊張させることです。声は緊張しているところに集まってくるのです。ちょっと難しいですが、これも実際のレッスンの中でコツをつかめると思います。