最後のひとハケ
呼吸、声帯、共鳴、支え...声楽発声の重要事項は多岐に亘りますが、すべて「素敵に歌を歌うため」のテクニック。化粧で言えば基礎化粧からファンデーションまで。そしていよいよ、最後の口紅や頬紅が「発音」です。これがしっかり効いていてこそ、丁寧なお化粧がぐっと引き立ち、その人の個性が生きてきます。今日はそのテクニックについてお伝えしましょう。
まずは舌のストレッチ!
日本語は発音が不明瞭になりやすい言語です。というのも
①あまり舌や唇を使わない。→滑舌が悪くなりやすい。
②下あごに力を入れてしゃべる。→声が通りにい。
③口先でしゃべる。→口の中がせまく、響きが足りない。
これらの点を意識したエクササイズをご紹介します。
・舌を思い切り前に出し、パッと引っ込める。
・口を閉じて舌で前歯の表面をぐるっとなめまわす。右回りに10回、左回りに10回。
・頬の内側を舌先で叩きながらスピーディーに往復する。30往復を一気に。
・唇の形を変えずに(=下あごを動かさずに)舌だけ動かして「アエアエアエアエ...」と連続的に発音する。エの時に舌が持ち上がるように。次に、エの時に舌を「あっかんべー」の「べー」の要領で突き出すように。
・巻き舌(タングトリル)。べらんめえ口調の要領でrrrr… これは難しい人には難しいです。私も7年かかって習得しました(-_-;)「札幌ラーメン」と勢いよく立て続けに言ってみたり、trr trr tr trr、と繰り返したり、根気よく。
唇のストレッチも!
・リップロール。上下の唇を軽く合わせて息を強く吹き付け、ブルブルと振動させます。
・口角を思い切り横に引いて「イ」、口の先をひょっとこのように前に突き出して「オ」、と交互になるべく早く発音します。これは表情筋のストレッチにもなります。
・唇を使う発音の練習。唇を閉じ、下あごに力を入れずに、息をいったん口先にためておいて「パパパパ・・・」、「ババババ・・・」、「ママママ・・・」。自然と腹圧がかかってきます。
歯も使います!
歯と舌で作る発音もあります。これも舌の筋肉のトレーニングになります。
・上の前歯の裏側に舌先をつけた状態で息を口先にため、「タタタタ・・・」、「ダダダダ・・・」、「ナナナナ・・・」、「ララララ・・・」。下顎がガクガク動かないよう、鏡を見ながら練習しましょう。
・腹圧をかけながら前歯の間から強い息を出し、sの子音だけで「スーーー」、zの子音だけで「ズーーー」と伸ばします。腹圧を感じればOK。歳と共に歯にスキマができてくるので、これは結構大変かもしれませんが、姿勢を崩さずにやりましょう。
軟口蓋と奥舌も!
gとkの子音は、舌背(奥舌)が軟口蓋から離れる時に出る音です。下あごを動かさずに、奥舌の動きだけで「カカカカ・・・」、「ガガガガ・・・」。これもなかなか大変ですが、奥舌で軟口蓋を蹴っ飛ばすつもりで。
どの練習も腹筋、背筋などお腹回りの筋肉を使います。「よく通る声」には下半身の筋力が不可欠だということがよくわかります。筋肉を十分に使わずに大きな声を出そうとして声を振り絞ると、喉を傷めます。ご注意!