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シューベルトの友人たち

先日Oさんのレッスンで、シューベルトの名歌曲「音楽に寄すAn die Musik」をやりました。この曲はシンプルながら滋味のある、そして壮大な感じもする素晴らしい曲です。若い頃はそれがよくわかりませんでしたが、シューベルトは年を重ねるほどにしみじみと「素晴らしいなあ」と思いますね。

この曲の歌詞がまず感動的です。音楽に向かって「苦労の多い人生の中で、君は心に温かい灯をともしてくれた。君の聖なる甘美な溜息が、私を天上の世界にいざなってくれた」と感謝する内容です。まるでシューベルト自身の心境が表現されているようです。

この詞を書いたのはシューベルトの親友だったショーバーです。シューベルトは生涯貧しいボヘミアンでしたが、彼が作曲に専念できるよう助けてくれるたくさんの友人を持っていました。彼らはシューベルトを囲む芸術的なサロン「シューベルティアーデ」の立役者でもあり、そこで彼は自作の歌曲を披露することができました。きっとこの「音楽に寄す」もそうした折に演奏されたのでしょう。シューベルトはゲーテのような文豪の詩にもたくさん付曲していますが、彼の友人たちが書いた詩への付曲も多く、600曲もの歌曲を残しました。どの曲にもシューベルトらしさがあふれています。シューベルトの音楽は友情の賜物なのです。僕は作曲するために生まれてきた、と言ったシューベルト。それを喜んで支えた友人たち。物質的には恵まれなくても、何と豊かで幸せな人生だったことでしょう。

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