これで「みいつ」と読みます。神の威光をこう言います。
ベートーヴェンの有名な歌曲「DIe Ehre Gottes aus der Natur」。直訳的には「自然における神の栄光」です。
昨日、久しぶりにお会いした30代の男性の生徒さんに、来年の発表会に出て頂くようお話して、曲を何にしようかと相談の結果、この曲に決まりました。実はこの曲にはちょっと思い入れがあります。
私が中学校に入った年、校内合唱コンクールで3年生が歌った課題曲がこの曲で、その荘厳さに驚き、いたく感動したのです。もちろん日本語訳で歌われたのですが、その詩がまた凄かった。
おごそかの神の御稜威(みいつ)
みそらにとどろき
海も陸(くが)も讃え歌う
聴け、人、その声
誰(た)ぞ置きし百千(ももち)の星
掲げし天つ日(あまつひ)
誰(た)ぞくだす果てし知れぬ
みそら彼方(あなた)ゆ
常(とこ)光るあかり
この文語詩を中学生が歌うとはね。
ともかく、この曲にぞっこん惚れ込んだ中1の私は、歌詞の意味を一生懸命考えました。
まず「みいつ」がわからない。「くが」は海との対だからきっと「陸」だろうな。「ももち」は「星」にかかっているからきっと「たくさん」という意味だろう、ひょっとしたら百千って書くのかな?「あなたゆ」とは何ぞや?たしか「山のあなたの空遠く」という詩があったから(うちの父が好きな詩だったので、聞きかじっていました)、「あなた」は「遠く」という意味だろうけど、接尾辞の「ゆ」は?「とこひかるあかり」...ひかるあかりは「光る明かり」だろうけど、「とこ」は?あ、死後の世界を「とこよのくに(常世の国)」って言ったよね、それじゃ「常」だ!
とまあ、こんな感じで謎解きのように歌詞を解読したものでした。
長じて合唱団の指揮者になり、この曲をドイツ語で歌うことになった時、小品ながらスケールの大きなこの曲に改めて惚れ直しました。苦難をバネにして、「運命」のような重厚さと「エリーゼのために」のような繊細さを兼ね備えたたぐいまれな才能を存分に発揮し、波乱の生涯を力強く生き切ったベートーヴェン。第九初演時、もう完全に失聴していて聴衆の熱狂的なスタンディングオベーションにも気づかず、見かねたコンサートマスターが客席を振り向かせて、初めて成功を知ったというエピソードなど、思うだけで涙が出そうです。
ベートーヴェンを聴くと元気が出ますよね。コロナ禍の閉塞感を打ち破るべく、もっともっと聴かれてもいいのではないかと思います。